「病気を診るのではなく、患者を診よ」― 慈恵医大の創設者である高木博士の言葉は今に到るまで合言葉のように語られていますが、医療現場での実践はなかなか容易ではありません。
医師の絶対数不足による過酷な勤務状況、矛盾だらけの医療制度、科学偏重の医療技術など、その要因は様々に考えられます。しかし何より、医師としての教育を受ける段階で、膨大な医学知識と病気を治す技術しか教えられないことが最大の原因と言えるかもしれません。
その結果、未だ治療技術が確立していない癌の終末期や、原因さえ分っていない難病の患者さんの多くは、ベッドの上で死の恐怖と闘いながら貴重な時間を苦悩のうちに送り、家族は無力感に苛まれて疲労困憊してしまいます。現代医学は、卓越した治療技術と引き換えに、大切なものを犠牲にしてしまったのです。
私たちはこのように現代医学の有効性と限界を認め、かつ医療の現実的な問題点を凝視したうえで、宗教者の立場から現代医療を補完し支援する活動が必要であり、また可能であると考えています。
臨床僧とは文字どおり臨床の場、生老病死の現場に立つ僧侶です。医療は多職種からなるチームで行われます。臨床僧も当然このチーム医療の一角に加わります。したがってまずは臨床にかかわることのできるホームヘルパーやケアワーカーなどの公的資格を取得することを最低要件にいたします。そのうえで個別に必要な研修・実習などを行い、当会が適当と評価判断して、はじめて医療の現場に立つことができます。
活動の場は病院などの医療施設に限られません。今後増加する在宅ケアでも、大きな役割を担います。
私たちは仏教者としての一つのありかたを実践しようとしています。今や説く宗教の時代は終わり、まさに身をもって行動する宗教の時代です。僧侶として掲げている「衆生済度」「為人度生」「利他の行」等の言葉が本物であるならば、実際の行動で示していこうというのです。
吹き抜ける風のようにさわやかに、陽だまりのように温かく、大地のようにどっしりと。患者さんやご家族の方々に遠く近く寄り添い、重く尊い経験を分かち合う生老病死の伴走者となります。臨床僧の果たす役割に関心をお寄せいただくとともに、本会の活動に対して多くの方々の格別なるご協力ご支援をお願い致します。
平成22年10月
代表顧問(50音順)
臨済宗相国寺派 有馬賴底管長
臨済宗妙心寺派 河野太通管長
幸・総合人間研究所 早川一光所長
代 表: 佐野 泰典
事務局: 児玉 修